TFCC損傷の真実:手首の痛みの根源は、肩にあるかもしれない!?
手首の小指側がズキッと痛む。ドアノブをひねる、重いものを持つ、あるいはゴルフスイングやテニスのフォアハンドで、その鋭い痛みが走る。そのような症状がでて病院へ行くと、「三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷」と診断されたことがある方もいるのではないでしょうか?この損傷は、手首の使いすぎや外傷によって引き起こされると一般的に考えられており、治療は手首の安静、サポーター、そして痛み止めの処方など、局所的なアプローチが中心となりがちです。
しかし、もしその手首の痛みが、遠く離れた「肩関節」の機能不全から来ているとしたらどうでしょうか。
この記事では、TFCC損傷と肩関節の意外な、しかし決定的な関連性について、そのメカニズムと根本的な解決策を徹底的に解説します。手首の痛みに悩むすべての方へ、視点を変えることで見えてくる、新たな治療と予防の道筋をお伝えします。
1.TFCCとは何か?そして、その重要な役割
まず、TFCC損傷のメカニズムを理解するために、TFCCが何であるかを再確認しましょう。
TFCCは、前腕の2本の骨(橈骨と尺骨)と、手首の骨(手根骨)の間、ちょうど手首の小指側に位置する、複数の靭帯と軟骨からなるクッションのような組織です。この複雑な組織には、主に二つの重要な役割があります。
- 手首の安定化: TFCCは、ドアノブを回すような前腕のひねり動作(回内・回外)の際に、橈骨と尺骨の間の関節(遠位橈尺関節)を安定させる役割を担っています。この組織が損傷すると、手首をひねる動作で不安定感や痛みが現れます。
- 衝撃吸収: 手をついたり、重いものを持ったり、スポーツで強い衝撃が加わったりした際に、TFCCは手首にかかる圧力を分散し、衝撃を和らげるクッションとして機能します。
TFCCが損傷すると、これらの機能が損なわれ、手首の小指側に痛みや不安定感が生じるのです。
2.キネティックチェーンの概念:なぜ肩が手首に影響するのか
私たちの体は、単一の関節が独立して動くのではなく、複数の関節が連動して動く「キネティックチェーン(運動連鎖)」として機能しています。スポーツにおけるパワーの伝達は、このキネティックチェーンを通じて行われます。
例えば、野球のピッチングを考えてみましょう。
脚から股関節、体幹、肩、肘、そして手首へと、まるで鞭のように力が伝わっていくことで、速いボールを投げることができます。この連鎖のどこか一箇所でも動きが悪くなると、その分を別の関節が無理に補おうとし、過剰なストレスがかかってしまいます。
TFCC損傷の多くは、このキネティックチェーンのどこかで生じた「機能不全の代償」として、手首に現れている可能性が高いのです。そして、その機能不全の起点となりやすいのが、肩関節です。
3.肩関節の機能不全がTFCC損傷を引き起こすメカニズム
では、具体的に肩のどのような問題が、手首のTFCC損傷につながるのでしょうか。
3-1. 肩関節の可動域不足
野球、テニス、ゴルフなど、肩を大きく動かすスポーツでは、肩の回旋可動域が非常に重要です。特に、肩の内旋・外旋がスムーズに行われることで、腕全体の動きが効率的になります。
もし、肩関節が硬く、十分に回旋できないと、パワーを伝えきることができず、その不足分を手首で補おうとする「手打ち」のスイングや投げ方になります。
- ゴルフの例: 肩の回旋が不十分なゴルファーは、ダウンスイングからインパクトにかけて、手首を必要以上に使ってクラブヘッドを走らせようとします。この「フリップ」と呼ばれる不自然な手首の動きは、TFCCに強いせん断力(ひねる力)を繰り返し加え、損傷の原因となります。
- テニスの例: 肩の回旋が硬いと、サーブやフォアハンドで無理に手首をひねってラケット面を安定させようとします。これにより、インパクト時に手首のTFCCに強い衝撃とねじれの力が集中してしまいます。
3-2. 肩甲骨の不安定性
肩関節の土台となるのが、背中にある「肩甲骨」です。肩甲骨は、腕のダイナミックな動きを支えるための安定した足場を提供します。
しかし、肩甲骨を安定させる筋力が不足していたり、動きが悪かったりすると、腕を上げた際に肩甲骨が適切に動かず、肩の動きが制限されます。その結果、腕全体のスムーズなパワー伝達が阻害され、手先や手首で無理な操作を行うことになり、TFCCに過大な負担がかかります。
3-3. ローテーターカフ(回旋筋腱板)の求心性能力の低下
肩関節の安定性を保つ重要な筋肉群が「ローテーターカフ」です。投げる、打つといったスポーツ動作では、このローテーターカフが肩関節をしっかりと支えることで、力のロスを防ぎ、効率的な動きを可能にします。
ローテーターカフの求心性能力の低下があると、肩のダイナミックな動きの中で関節が不安定になり、本来肩が担うべきエネルギーを吸収できなくなります。その結果、そのエネルギーは末端の肘や手首に逃げてしまい、TFCCに過剰なストレスがかかることになります。
4.TFCC損傷と肩の「悪循環」
TFCC損傷は、肩の問題から引き起こされるだけでなく、その逆の悪循環も生み出します。
TFCC損傷による手首の痛みや不安定感があると、無意識のうちにその痛みをかばう動作をするようになります。たとえば、腕全体を固めて動かしたり、手首を使わずに肩だけで不自然に腕を振ったりします。このような代償動作が、今度は肩に新たな問題(肩関節インピンジメント症候群や腱炎など)を引き起こす可能性があります。
つまり、手首と肩の問題は、互いに悪影響を及ぼし合う「悪循環」に陥ることがあるのです。
5.根本治療と予防:手首だけでなく、肩を診る
TFCC損傷の痛みから本当に解放されるためには、手首への局所的な治療だけでなく、全身の運動連鎖、特に肩関節の機能に目を向けることが不可欠です。
5-1. 適切な診断と全身評価
手首の痛みがある場合、まず整形外科でTFCC損傷の診断を受けましょう。その上で、理学療法士などの専門家に、肩関節や肩甲骨の可動域、筋力、そして動作パターンを評価してもらうことが重要です。
5-2. 総合的なリハビリテーション
治療は、手首の安静とリハビリに加え、以下の点に焦点を当てて行います。
- 肩関節のモビリティ改善: 積極的に肩関節のストレッチを行い、内旋・外旋の可動域を広げます。
- 肩甲骨の安定性向上: 肩甲骨をコントロールするための筋力トレーニング(ローイングやY字レイズなど)を行い、肩の土台を強化します。
- ローテーターカフの強化: 肩をあらゆる方向から安定させるためのエクササイズを行います。
5-3. 動作パターンの修正
根本的な解決には、スポーツにおける動作フォームを見直すことも不可欠です。コーチや専門家と協力し、手首に頼らず、肩や体幹を使って効率的にパワーを伝達するフォームを習得しましょう。
6.まとめ
TFCC損傷は、単なる手首の使いすぎで起こる局所的な怪我ではなく、全身の運動連鎖、特に肩関節の機能不全がその遠因となっていることが多いのです。手首の痛みを根本から解決し、再発を防ぐためには、手首の治療と同時に、肩の可動域を広げ、安定性を高めることが不可欠です。
もしあなたが長引く手首の痛みに悩んでいるなら、ぜひ一度、鏡でご自身の肩の動きをチェックしてみてください。もしかすると、その痛みの真犯人は、手首ではなく、肩にあるのかもしれません。手首の痛みから解放され、より長くスポーツを楽しむために、今日から肩のケアを始めてみませんか。
当院では手首だけではなく、全身を見て治療を行うことで、TFCC損傷の痛みにアプローチしていきます。TFCC損傷の痛みでお困りの方は、ぜひ1度ご相談いただければと思います!
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