単なる「使いすぎ」で終わらせてはいけないシーバー病の痛み
成長期にある子どもたちにとって、スポーツは自己成長と楽しみの大きな源です。しかし、その活動のさなか、かかとの激しい痛みに襲われることがあります。これが「シーバー病(Sever’s disease)」、または「踵骨骨端症(しょうこつこつたんしょう)」と呼ばれる疾患です。
多くの整形外科やスポーツ現場では、シーバー病は「使いすぎ(オーバーユース)」が主な原因と説明され、安静やインソールでの対応が基本とされています。もちろん、成長途上にあるかかとの骨(踵骨)の後ろ側にある成長軟骨(骨端線)が、アキレス腱や足底筋膜の牽引力によって炎症を起こすという病態は正しいです。
しかし、本当にそれだけで痛みが説明できるのでしょうか? 同じ練習量、同じ体の使い方をしているチームメイトの中で、なぜ彼だけが、彼女だけが痛みに苦しむのか? この疑問を深掘りすると、痛みの発生源は「かかと」という末端ではなく、体の「土台」と「システム」 にあるという重要な真実が見えてきます。
このブログでは、シーバー病の根本原因として見過ごされがちな**「仙腸関節の機能不全」と、身体の回復力を左右する「水分摂取と全身の循環」**の密接な関係性を、詳細かつ専門的に解説していきます。
シーバー病の隠れた真犯人 – 「仙腸関節」の機能不全
1. 仙腸関節とは? なぜシーバー病に関わるのか
仙腸関節は、骨盤を構成する大きな骨である「仙骨」と「腸骨」が連結する、背骨の最下部にある関節です。
「関節」と聞くと大きく動くイメージがありますが、仙腸関節の動きは非常に微細です。数ミリ以下の滑りやローテーションしか起こりません。しかし、この微細な動きこそが、**上半身の重みを下肢に分散し、地面からの衝撃を吸収する「ショックアブソーバー」**として、私たちの体を守る上で極めて重要な役割を果たしています。
この仙腸関節が、何らかの原因(姿勢の悪さ、片側への体重の偏り、急激な運動負荷など)で動きを失ったり、過剰に動きすぎたりする状態が「仙腸関節機能不全」です。この機能不全は、骨盤周辺の筋肉の過度な緊張や、日常の不良姿勢が長期間続くことで引き起こされます。
2. 仙腸関節の機能不全が、いかに「かかと」に影響するか
仙腸関節の機能が低下すると、体には以下の連鎖反応が起こります。
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衝撃吸収能力の低下:
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仙腸関節がスムーズに動かないと、地面を蹴った際や着地した際の衝撃を十分に吸収・分散できません。
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その結果、衝撃波は骨盤→股関節→膝→足首へと、ダイレクトに下肢全体に伝わってしまいます。
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この過剰な衝撃が、足の最も弱点である成長期のかかとの骨端線に集中し、炎症を加速させる原因となります。微細な動きが止まることで、体全体の免震システムが機能不全に陥るのです。
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左右のアンバランスと軸のズレ:
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仙腸関節の機能不全は、骨盤の左右の高さや前後への傾きを生み出します。
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骨盤が歪むと、その下にある下肢の骨(大腿骨、脛骨)も内旋・外旋し、足のつき方(回内・回外)に異常をきたします。
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例えば、仙腸関節が原因で片足に強い「回内(オーバープロネーション)」が生じると、その足のアキレス腱や足底筋膜は常に過剰に引っ張られた状態になります。この**「ねじれのストレス」**こそが、シーバー病の痛みを慢性化させる最大の要因の一つなのです。このねじれは、かかとへの継続的な牽引力となり、治癒を妨げます。
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姿勢制御の破綻と筋緊張の亢進:
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仙腸関節の周りには、体幹の安定性を保つための深層筋(インナーマッスル)が多数付着しています。
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仙腸関節が不安定になると、これらのインナーマッスルがうまく機能せず、体はバランスを取ろうと表面の大きな筋肉(アウターマッスル)を過剰に使います。
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この代償作用により、背中や腰、そして下肢全体の筋肉が常に硬直し、血行不良を招き、炎症物質が停滞しやすい体になってしまいます。特にふくらはぎの筋肉の緊張は、アキレス腱を介してかかとにダイレクトな影響を与えます。
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結論として、シーバー病の痛みは、かかとへの直接的な負荷だけでなく、**「仙腸関節の動きの悪さから生じる、全身の衝撃吸収・バランス機能の破綻」**という間接的な要因によって、より強く、より慢性的に引き起こされている可能性が高いのです。
痛みを長引かせている「循環不良」と「水分不足」
仙腸関節の機能不全が「物理的な歪み」であるとすれば、全身の「循環不良」と「水分不足」は、**痛みの治癒を妨げる「化学的な障害」**と言えます。
1. 痛みの治癒に必要なシステム – 「血流」の役割
体の一部が炎症を起こしたとき(シーバー病の骨端線炎など)、治癒を促進するためには次の2つのプロセスが不可欠です。
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栄養素と酸素の供給:
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損傷した組織を修復するためのタンパク質や、細胞を活性化させるための酸素を、血液に乗せて患部に送り届ける必要があります。特に成長期の子どもにとって、成長軟骨を修復するための栄養供給は非常に重要です。
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老廃物と炎症物質の回収:
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炎症を起こすと、痛み物質(ブラジキニンなど)や、細胞の残骸といった老廃物が患部に溜まります。これらをリンパ液や静脈の血流に乗せて速やかに運び出し、腎臓や肝臓で処理する必要があります。炎症物質が滞留すると、痛みは継続します。
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もし、血流が悪い状態(循環不良)であれば、これらの供給と回収のシステムがうまく機能せず、炎症はいつまでも鎮静化せず、痛みは長引くことになります。特に、かかとなどの体の末端は元々血流が滞りやすい場所であるため、全身の循環を意識的に高めることが極めて重要です。また、仙腸関節の動きが悪いと、周辺の筋肉が硬くなり、大きな血管やリンパ管を圧迫し、さらに循環不良を悪化させるという悪循環も生まれます。
2. 軽視されがちな「水分」の力 – 体液のマスターキー
多くの人が「喉が渇いたら飲む」という感覚で水を飲んでいますが、スポーツ選手の体にとって「水分」は、ただの潤い以上の役割を果たします。
私たちの体の約60%は水分ですが、この水分は「血液」「リンパ液」「細胞内液」「細胞外液」として、全身の機能を支えています。
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血液の粘度と流れの決定要因:
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水分が不足すると、血液の水分量が減り、血液はドロドロとした高粘度な状態になります。
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ドロドロの血液は、細い毛細血管(特に炎症を起こしているかかとの周囲)をスムーズに流れにくくなり、上記で説明した「栄養供給と老廃物回収」のシステムを大幅に低下させてしまいます。この結果、治癒過程が劇的に遅延します。
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シーバー病の子どもの多くは、運動量が多い割に水分補給が不足しており、慢性的な軽度の脱水状態にあることが少なくありません。この脱水が、痛みの遷延化に決定的な役割を果たしている可能性があります。
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筋肉の弾力性と関節の機能維持:
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筋肉組織の約70~80%は水分です。水分が不足すると筋肉細胞の弾力性が失われ、硬直化します。
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シーバー病の主な原因である「アキレス腱の牽引力」は、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)の硬さから生じます。十分な水分摂取は、筋肉細胞の潤いを保ち、結果的にアキレス腱の過度な緊張を緩和することに間接的に役立ちます。筋肉の柔軟性が保たれれば、仙腸関節への負担も軽減されます。
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また、仙腸関節を含め、全ての関節の動きを滑らかにする「滑液」も水分が主成分です。体液が不足すると、関節の摩擦が増加し、機能不全を悪化させます。
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自律神経の安定と血管の調整:
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脱水状態は、体にとってストレスです。自律神経のうち「交感神経」を優位にし、筋肉を緊張させ、末梢の血管を収縮させてしまいます。
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血管が収縮すれば、当然ながら血流が悪くなり、炎症の治りは遅くなります。十分な水分摂取は、自律神経のバランスを整え、血管の拡張を促し、血流改善をサポートします。
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シーバー病の根本解決に向けた具体的なアプローチ
シーバー病の痛みを真に改善し、再発を防ぐためには、「かかとへの安静」だけではなく、「仙腸関節の改善」と「全身の循環促進」という2つの視点を取り入れた具体的な戦略が必要です。
1. 仙腸関節の動きを改善するセルフケアと専門的アプローチ
【セルフケア:体幹の安定性と日常動作の修正】
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骨盤の傾きを調整する運動(体幹コントロール): 仰向けになり、腰の下の隙間を埋めるように軽くお腹に力を入れ、骨盤をわずかに後傾させる「骨盤のニュートラルポジション」を意識する運動を繰り返します。これにより、仙腸関節を安定させる深層筋(インナーマッスル)の働きを促します。
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姿勢と体重のかけ方の意識化: 立っているとき、座っているとき、片足だけに体重をかける癖や、足を組む癖を意識的に避けます。骨盤への左右均等な荷重を日常から心がけることが、仙腸関節の歪みを防ぐ第一歩です。
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軽い腹筋運動(ドローイン): 腹圧を高め、インナーマッスルを活性化させることで、仙腸関節を含む骨盤周りの安定性を高めます。運動負荷ではなく、正確な動作の反復が重要です。
【専門的アプローチ:治療院での処置】
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仙腸関節の徒手調整: 仙腸関節の動きの硬さや歪みは、専門的な知識と技術を持つ理学療法士、柔道整復師、またはカイロプラクターによる徒手療法で調整が必要です。微細な動きを回復させることで、下肢への衝撃分散機能を回復させます。
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体幹深部筋のリハビリテーション: 仙腸関節の安定に不可欠な多裂筋や腹横筋といった深部の筋肉を、正しく使えるように促すリハビリテーションが重要です。インナーマッスルが機能することで、アウターマッスルの過剰な緊張が解放されます。
2. 全身の循環を促進し、治癒を加速させるライフスタイルの改善
【最重要課題:意識的な水分摂取】
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「のどが渇く前」に飲む習慣の確立: のどの渇きを感じた時点ですでに体は脱水状態です。運動前、運動中、運動後の計画的な水分補給が必須です。
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水分補給の質: 基本は水または麦茶です。ミネラル分を補給しつつ、普段の生活では糖分の摂りすぎを防ぐため、清涼飲料水ではなく水が最適です。
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飲む量の目安と観察: 体重、気温、運動量に応じて、常に尿の色が薄い黄色〜透明になるように意識して水分を摂取させましょう。これは適切な水分量が体に行き渡っているかの最も簡単な指標です。
【その他の循環改善策】
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入浴(温浴)による血管拡張: シャワーで済ませず、湯船に浸かることで全身の血管を拡張させ、血液の流れを改善します。熱すぎないお湯に10分〜15分浸かることで、硬くなった筋肉を緩め、血流を介した老廃物回収を促す効果が高いです。
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全身の軽い有酸素運動(負荷の少ないもの): 痛みが落ち着いている時期には、水泳やサイクリングなど、かかとに直接的な衝撃や負担をかけない軽い有酸素運動を取り入れ、心拍数を上げて全身の血流を増やす習慣をつけましょう。これは、血液のポンプ作用を高めるために有効です。
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適切な栄養摂取: 血液を健康に保つための鉄分(ヘモグロビンの材料)や、ビタミンC・E(抗酸化作用と血流促進)を意識的に摂取することも、間接的な循環改善に繋がります。特に炎症を抑えるオメガ3脂肪酸の摂取も重要です。
全体を診る視点が未来のスポーツライフを守る
シーバー病は、一時的な痛みで終わらせてはいけない、体からの重要なサインです。
「かかとが痛いから、かかとだけを治す」という対症療法では、症状が治まっても、仙腸関節の歪みや、全身の循環不良といった根本原因はそのまま残り、他の部位の怪我(膝の痛み、腰痛など)や、シーバー病の再発に繋がります。
シーバー病の痛みを、単なる「オーバーユース」ではなく、「仙腸関節からくる全身のアンバランス」と「水分・循環システムのエラー」として捉え直すこと。
この視点こそが、子どもの体を根っこから強くし、痛みから解放された健全で、長く充実したスポーツライフを築くための鍵となります。指導者、保護者、そして本人も、ぜひこの知識を共有し、実践していただきたいと思います。
院情報
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