野球肘の痛みは、多くの選手にとって深刻な問題です。「痛いなら休む(ノースロー)」が常識とされていますが、なぜか痛みが一時的に引いても、投球を再開するとすぐに再発してしまうケースが後を絶ちません。
その理由は単純です。肘の痛みは結果であり、真の原因は、投球という複雑な運動連鎖(キネティックチェーン)を支える体幹の「動力源」と「安定性」を担う深部筋群の機能不全にあるからです。
このブログでは、ノースローの限界を解説し、特に野球肘と密接に関わる後鋸筋、広背筋、対側の外腹斜筋という三つの重要筋が、いかに肘への過剰なストレスを生み出しているのかを、バイオメカニクスの観点から徹底解説します。(※本記事では、具体的なセルフケアや治療法には触れません。)
ノースローが根本解決にならない構造的理由
ノースローは、炎症反応を鎮静化させる(すなわち痛みの結果を一時的に抑える)ための有効な手段です。しかし、投球動作を歪めている根本的な原因には一切アプローチできていません。
1. 運動連鎖(キネティックチェーン)の破綻
野球の投球は、下半身から生み出された地面反力や回転エネルギーを、体幹を介して肩甲帯、そして末端の肘・指先へと伝達する全身運動です。この一連の流れが運動連鎖です。
もし体幹や肩甲帯(特に後述する広背筋、外腹斜筋など)の機能が低下していると、このエネルギー伝達経路に「漏れ」や「停滞」が生じます。体幹でエネルギーが十分に生み出されない、あるいは伝達されない場合、最終的に末端の関節(肩と肘)がその不足分を代償しようとします。
この代償動作こそが、肘関節への過剰な回旋ストレスや牽引ストレスを生み出し、痛みの原因であり続けます。ノースローで休んでも、この破綻した運動パターンは脳の運動野に記憶されたまま再開されるため、痛みは高確率で再発します。
2. 静的アライメントの崩れと負荷の集中
体幹の特定の筋肉が機能不全に陥ると、投球時だけでなく、**安静時(静的姿勢)**のアライメント(骨格配列)にも影響を及ぼします。
例えば、広背筋や後鋸筋の緊張が強すぎたり弱すぎたりすると、肩甲骨の位置や胸郭の柔軟性が損なわれます。これにより、投球時の最大外旋位(コッキング後期)などで、**最適な関節適合性(ジョイント・コンフォーミティ)**が失われ、特定部位(例:肘の内側、内側側副靭帯)に集中的な負荷がかかり続ける状態が生まれます。ノースローは、この静的な問題も解決しません。
野球肘を招く「動力源」の機能不全:3つの重要筋
ここでは、野球肘の根本原因として見過ごされがちな、体幹と背中の重要筋の機能と、その不全が投球動作に与える影響を解説します。
1. 広背筋:パワー伝達と減速の要
広背筋は、上腕骨と体幹(脊柱・骨盤)を結びつける巨大な筋で、投球動作におけるパワー伝達と安定性の両面で極めて重要な役割を果たします。
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機能と役割:
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加速期: 投球の加速局面で上腕を内旋・内転させる主要な筋であり、パワーを生み出します。
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減速期: ボールリリース後、腕が振りすぎないように、上腕骨を体幹に引きつける形で急激に収縮してブレーキをかける役割があります。
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機能不全が肘に与える影響:
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広背筋の筋力不足や協調性の欠如により減速機能が低下すると、腕の遠心力や慣性力が制御できず、肘関節(特に内側)に過剰な牽引ストレスが集中します。この過負荷が、内側側副靭帯や付着腱の損傷を引き起こす主要因となります。
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広背筋の柔軟性や安定性の低下は、肩甲骨の適切な動きを妨げ、肩関節の回旋運動(特に内旋)を代償するために肘の負担を増大させます。
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2. 対側の外腹斜筋:回旋運動の起動エンジン
外腹斜筋は、体幹の回旋(捻り)運動を担う主要な筋肉であり、**投球側とは反対側(対側)**の筋が、投球の準備期から加速期にかけて最も重要な役割を果たします。
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機能と役割:
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運動連鎖の起動: ワインドアップやセットポジションからの**体幹回旋(体幹を投球方向に捻る)**を生み出し、下半身からのエネルギーを体幹に引き上げ、上肢へと伝える役割を担います。
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体幹の安定化: 回旋運動中に体幹を安定させ、軸をぶれさせないことで、パワーの伝達効率を最大化します。
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機能不全が肘に与える影響:
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対側の外腹斜筋の筋力不足や協調性低下により、体幹の回旋速度と回旋量が不十分になります。
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体幹の回転が不足すると、パワー不足を補うために、投球動作が**「手投げ」**となり、肩関節の水平内転や肘の屈曲・伸展運動に頼る形になります。この結果、肘関節に不必要な圧縮力や剪断力が加わり、外側(離断性骨軟骨炎など)や後方(骨棘など)の痛みを引き起こすリスクが高まります。
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3. 後鋸筋(特に下部):胸郭の柔軟性と安定化
後鋸筋(こうきょきん)は広背筋などの深層に位置し、特に後鋸筋下部は肋骨と脊椎に付着しており、胸郭の動きと安定性に深く関与します。
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機能と役割:
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胸郭の可動性: 深い呼吸運動を介して、肋骨と胸椎の動き(特に伸展と回旋)をサポートし、投球に必要な胸郭の柔軟性を確保します。
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体幹の深層安定化: 投球動作中に体幹の深部を安定させる役割も担い、広背筋などのアウターマッスルが効率よく働くための土台を提供します。
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機能不全が肘に与える影響:
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後鋸筋の機能低下や過緊張は、胸郭の柔軟性を低下させ、投球に必要な胸椎の伸展・回旋を制限します。
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胸郭の可動性が制限されると、体幹の回旋エネルギーが腕に伝達されず、肘関節が**過剰な外転(腕を横に広げる動き)**を強いられるなど、非効率的なアームスローイングにつながります。この歪みが、肘関節への異常な負荷として現れます。
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まとめ:原因解決型のトレーニングへの転換
野球肘の痛みがノースローで改善しないのは、肘への負荷を生み出す体幹の機能不全が置き去りにされているためです。
後鋸筋、広背筋、対側の外腹斜筋といった「動力源」の機能が回復しない限り、どれだけ休んでも破綻した運動パターンは残り続けます。
真の回復を目指すには、単に休むことから、これらの体幹深部筋群の機能回復、協調性の再獲得、そして正しい運動連鎖の再学習を中心としたアプローチへとシフトすることが不可欠です。
もし現在ノースローで悩んでいるのであれば、痛みの部位だけでなく、ご自身の投球を支える**「体幹」という土台**の機能を見つめ直すことが、パフォーマンス向上と怪我の再発防止への唯一の道となるでしょう。
院情報
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