なぜサポーターをしてもテニス肘の痛みが良くならないのか?
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、テニスプレイヤーだけでなく、料理人、美容師、大工、デスクワーカーなど、日常的に手首や指を酷使する方に非常に多く見られる疾患です。多くの方が、痛みを和らげようと医療機関やドラッグストアで勧められたサポーターを装着しますが、熱心に使っているにもかかわらず、痛みが一向に良くならない、あるいは悪化しているように感じるという悩みに直面します。
この「サポーターが効かない」という現象を理解するには、テニス肘の病態と、サポーターの機能、そして血流の関係性を深く知る必要があります。
1. サポーターの役割と限界の深掘り
テニス肘用のサポーター(主にバンド型)の主要な目的は、手首や指を動かす際に発生する腱への牽引ストレスを一時的に軽減し、痛みを緩和することです。肘から少し下の前腕の最も太い部分に装着し、伸筋群の筋肉の膨らみを圧迫することで、腱の付着部である肘の外側にかかる物理的な負担を分散します。
しかし、サポーターは以下のような理由から、根本的な治癒を促すものではありません。
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根本原因の放置: 痛みの根源にある「使いすぎ」や「不適切な動作パターン」が改善されなければ、サポーターを外した途端に腱への負担は元に戻ります。例えば、パソコンのマウス操作で手首が常に反っている状態や、重いものを持ち上げる際の手首の角度などが改善されなければ、サポーターは一時しのぎに過ぎません。
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装着位置と強度の誤り: 最も効果的な位置は、肘の外側にある痛みの中心部から約2~3cm前腕寄り、筋肉が最も盛り上がっている場所です。この位置がずれていたり、圧迫が強すぎたり弱すぎたりすると、効果は著しく低下します。特に強すぎる圧迫は、次に述べる血流を悪化させ、かえって治癒を遅らせるリスクがあります。
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慢性期への対応力の欠如: 痛みが長期化し慢性期に入ると、病態は単純な「炎症」から**「組織の変性」**へと移行します。変性した脆弱な腱組織を、サポーターが修復することはできません。この段階では、変性組織を入れ替え、健全なコラーゲンを再構築するための積極的なアプローチが必要です。
2. 患部の「炎症」から「組織変性」への移行メカニズム
テニス肘は、初期(急性期)にはオーバーユースによる微細な断裂と、それに対する身体の防御反応としての「炎症」が主体です。しかし、痛みが3ヶ月、半年と続く慢性期になると、組織学的な変化が見られます。
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炎症細胞の消失: 慢性化した腱組織からは、急性期に見られる炎症細胞が減少し、線維芽細胞の異常な増殖や血管・神経の異常な迷入が見られます。
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コラーゲン線維の乱れ: 本来規則正しく並び、強靭さをもたらしているコラーゲン線維の配列が不規則になり、組織の強度が低下します。これが「変性」です。
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「血管新生」と疼痛: 治癒を促すために血管が増えますが、この新生血管の周りには痛みを伝える神経線維も一緒に増えてしまうことがあります(神経新生)。これが、見た目には治癒に向かっているように見えても、痛みが続く大きな原因の一つと考えられています。
慢性化したテニス肘の治療が難しいのは、このような組織そのものの質の低下が起きているためであり、単なる安静やサポーターだけでは、この変性を逆転させることができないのです。
血流とテニス肘の慢性化の密接な関連
テニス肘の痛みが長期化し慢性化する過程において、**血流(血液循環)**は組織の修復を左右する最も重要なファクターの一つです。
1. 腱組織の低血管性と治癒のボトルネック
腱は、筋肉や骨に比べてもともと血流が少なく、特に肘の外側上顆に付着する短橈側手根伸筋腱の付着部は、組織の構造上、血液が十分に行き渡りにくい「ブラッドゾーン(低血管領域)」となっています。
損傷した組織が治癒するためには、血液によって運ばれる**豊富な酸素と、タンパク質などの栄養素(特にコラーゲン合成に必要なアミノ酸)**が不可欠です。
2. 血流不良が引き起こす悪循環
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栄養不足と修復不全: 慢性的な緊張や圧迫、あるいは動かさないことによる血行不良は、治癒に必要な栄養素の供給を妨げます。これにより、損傷部は健全な組織として修復されず、脆弱な変性組織のまま残ってしまいます。
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老廃物の停滞: 血流が滞ると、細胞の代謝によって生じた老廃物や、痛みの原因となる発痛物質(ブラジキニン、プロスタグランジンなど)が患部に蓄積しやすくなります。この老廃物の停滞が、痛みの閾値を下げ、ちょっとした動作でも強い痛みを感じさせる原因となります。
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サポーターの功罪: サポーターは物理的な負担を減らす一方で、不適切な締め付け方をすると血管を圧迫し、既に不足している血流をさらに悪化させる可能性があります。サポーター使用中は、指先の色や痺れをチェックし、血流を妨げていないか常に確認することが重要です。
慢性的なテニス肘を克服するには、単に「安静」にするだけでなく、いかにして肘周辺の血流を改善し、組織の修復力を高めるかが鍵となります。
良かれと思ってやっている? ストレッチが悪化を招く可能性がある!
テニス肘のセルフケアとして、前腕の伸筋群を伸ばすストレッチは広く推奨されますが、痛みが強い特定の状況下では、このストレッチが治癒を妨げ、症状を悪化させる「意外な習慣」となる可能性があります。
1. 「損傷部」への過度な伸張ストレスがもたらすリスク
テニス肘の痛みは、筋肉が伸びていることによるものではなく、その筋肉が骨に付着している腱の付着部、つまり損傷した組織が引っ張られることによって生じています。
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急性期・強い痛みの際のストレッチ: 痛みが強い段階で無理に手首を曲げて(掌屈させて)ストレッチを行うと、損傷し、炎症を起こしているデリケートな腱の付着部に強い牽引力がかかります。これは、治りかけの傷口を何度も引っ張って開く行為と同じであり、微細な損傷を再発させたり、変性した組織をさらに脆弱化させる原因となります。
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慢性期における線維の破壊: 変性している慢性期の腱は、正常な腱のような弾力性や強度を持っていません。無理なストレッチや強いマッサージは、せっかく修復されようとしているコラーゲン線維の弱い結合を破壊し、治癒の機会を奪うことになりかねません。
2. 痛みを伴うストレッチの代わりに必要なアプローチ
痛みが強い段階で、腱の治癒を妨げずに血流を改善し、筋力を維持するために有効なのは、痛みを伴わない範囲での運動です。
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アイソメトリックス(等尺性収縮): 肘や手首の関節を動かさずに、筋肉に力を入れる運動です。例えば、抵抗をかけずに指先で物を軽く握る動作を数秒間保持するなど。これは、腱の長さを変えずに筋肉を収縮させるため、損傷部に強い牽引力をかけずに血流を促すことができます。
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痛みの閾値の確認: ストレッチを行った後に痛みが増強したり、翌日まで痛みが残る場合は、その動作があなたの腱にとって「過度な負荷」となっている明確なサインです。すぐにそのストレッチは中止し、負荷が少なく、血流を改善する別のケアに切り替える必要があります。
テニス肘の痛みを改善するために取るべき次のステップ
サポーターを使っても改善しないテニス肘の痛みは、単なる休息や対症療法では解決しない、血流不足と組織の修復不全が深く関わっています。
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痛みの原因の特定と動作の改善: 日常生活における手首の角度、荷物の持ち方、スポーツのフォームなど、肘に負担をかけている動作を特定し、その動作パターンを変える工夫を始めましょう。
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血流促進の習慣化:
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痛みがない時や夜間に、肘全体を温める(温熱療法、入浴、ホットパックなど)習慣を取り入れ、患部の血流改善を意識的に促します。
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サポーターは血流を阻害しない適切な強さで使用し、特に長時間装着する場合は、定期的に外して血行を回復させましょう。
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ストレッチから負荷調整へ: 痛みを伴う伸張運動は中止し、痛みの出ない範囲での軽い運動やアイソメトリックスに切り替えます。これは、腱の強度を段階的に回復させ、健全な組織への再構築を促すための重要なステップです。体の反応を注意深く観察しながら、負荷を少しずつ調整していくことが、長期的な改善へとつながります。
テニス肘は、正しいアプローチで必ず改善に向かう疾患です。ご自身の体の声に耳を傾け、適切なセルフケアへと進んでください。
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