前十字靭帯(ACL)や後十字靭帯(PCL)の損傷は、膝関節に劇的な不安定性をもたらします。しかし、手術や保存療法を経て靭帯の機能がある程度回復した後も、膝の曲げ伸ばし(屈伸)の際に生じる鋭い、あるいは引きつるような痛みに悩まされ続けるケースが後を絶ちません。
多くの場合、この痛みは「関節がまだ不安定だから」「可動域が回復しきっていないから」と一括りにされがちです。しかし、膝の奥、特に裏側(後方)で生じる深部の痛みや、下腿へ放散するようなしびれを伴う場合、その真の原因は靭帯や関節の機械的な問題ではなく、**坐骨神経の主要な分枝である「脛骨神経(Tibial Nerve)」**の異常な状態にある可能性が高いのです。
【なぜ、屈伸時に「神経」が悲鳴を上げるのか】
靭帯損傷後の膝の機能不全は、単なる関節の緩みで終わるわけではありません。人体最大の末梢神経である坐骨神経から枝分かれし、膝の裏側を通り抜ける脛骨神経は、この損傷治癒のプロセスにおいて、予期せぬストレスにさらされます。
1. 靭帯損傷と神経線維の「巻き込み」
前・後十字靭帯は、単なる構造物ではなく、関節の位置情報を脳に送る感覚神経線維(固有受容器)を持っています。特に、後十字靭帯(PCL)は、**脛骨神経の枝である「後関節神経」**から神経供給を受けています。
靭帯が損傷し、その後周囲組織が出血や炎症を経て治癒する過程で、**瘢痕組織(傷跡)**が形成されます。この瘢痕組織が、本来自由であるべき脛骨神経やその枝に絡みつき、神経の動き(滑走性)を妨げてしまうのです。
2. 関節終末域での「絞扼(こうやく)と伸張」
膝の屈曲や伸展といった動作、特に「完全に曲げきろう」「完全に伸ばしきろう」とする関節の終末域の動きは、神経線維を強く牽引する動きです。
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動揺性の増加: 靭帯の損傷によって膝の骨(大腿骨と脛骨)の位置関係が微妙にずれると、膝の裏側を通る脛骨神経の走行経路が変化し、過度な伸張ストレスがかかりやすくなります。
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代償性の筋緊張: 不安定な膝を守るために、大腿部や下腿の筋肉、特にハムストリングスや腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)が過剰に緊張します。この過緊張した筋肉が、その下を通る脛骨神経を**「絞扼(締め付け)」**し、神経の血流を悪化させ、痛みを引き起こします。
この瘢痕組織による「癒着」と、筋肉による「絞扼」が複合的に作用することで、膝の屈伸という日常的な動作が、神経にとっては**「引き伸ばされ、締め付けられる」**という激痛のトリガーとなってしまうのです。
【リハビリテーションのパラダイムシフト】
長引く屈伸時痛から脱却するためには、「硬くなった組織を伸ばす」という従来の考え方から脱却し、**「神経の自由な動きを取り戻す」**という機能的な視点を持つことが不可欠です。
1. 神経の滑走性を高める(ニューロ・モビライゼーション)
これは、神経線維を積極的に動かし、周囲の組織との不必要な癒着を剥がすためのアプローチです。単に関節を曲げ伸ばすのではなく、膝や足首の位置を工夫することで、脛骨神経に特異的な「緩める」「引っ張る」の刺激を与え、神経本来の滑走能力を回復させます。痛みを恐れて動かさないでいると、神経の癒着は進行し、症状は悪化します。適切な方法で神経を動かすことが、痛みの悪循環を断ち切る鍵となります。
2. 関節の動揺性をゼロにする安定化トレーニング
神経へのストレスの多くは、靭帯機能不全による膝の**「不適切な動き」**によって発生します。屈伸時痛を根本から解決するためには、大腿四頭筋、ハムストリングス、そして股関節周囲の筋肉群を連携させて強化し、関節を強固に制御する能力を高める必要があります。
特に、不安定な膝を安定させるための筋肉の**「出力タイミング」と「協調性」を再教育することで、曲げ伸ばしの際に生じる骨の微妙なズレを防ぎ、結果的に脛骨神経にかかる機械的ストレスを根本から排除**することができます。
【まとめ:真のターゲットは「神経」である】
前・後十字靭帯損傷後の屈伸時痛は、単なる「リハビリ不足」や「筋力不足」の問題ではありません。それは、損傷治癒の過程で生じた瘢痕組織や、代償的な筋緊張によって坐骨神経の分枝である脛骨神経が苦しめられている証拠です。
もし、リハビリを続けても膝の裏側や深部の痛みが続くのであれば、あなたのリハビリの焦点は、単なる筋肉や可動域の改善から、**「脛骨神経の滑走性の回復」と「膝関節の機能的な安定性の獲得」**へとシフトさせるべきです。神経のメカニズムを理解し、適切なアプローチで痛みの真犯人に切り込むことが、スポーツや日常生活への完全復帰を果たすための最短ルートとなるでしょう。
院情報
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